0712

セックスが好きだ。愛されてると脳が勝手に勘違いするから。

その瞬間だけは彼は私のことしか見ていなくて、まるで盛りのついた動物のように息を荒くて目を光らせ、喉元に食らいついてくる。浅ましくて可愛くてくしゃりとその黒い塊を撫でてみた。

下半身に伸びた手を見て、この手であの子を抱きしめるのか、なんて嫌なことを考える。思考を振り切るように彼のペニスを自らの中に誘い込み、いやらしく腰を振った。

あ、あ、あ、あ、あ。

断続的に漏れる喘ぎ声に彼の腰の動きも速くなる。すき、すき、すき。うわ言のように出た言葉は宙を引っ掻いて消えた。彼の目に私が映っていないことなんてわかってた。そんなの承知の上なのに。

絶頂を迎えた彼がペニスを引き抜きコンドームを外す。その手際のよさがなんだか悲しかった。好きだよと笑って頭を撫でてくれる人はもういない。ゴミ箱に捨てられた数億の命だけが私たちの結末を知っていた。

 

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0608

嫌いのものがどんどん増えていくのが嫌だった。歳をとるにつれ壁を作り拒絶しまるで世界中の人間に嫌われているかもしれない、なんてしょうもない妄想を作り上げ勝手に怯える。そんな人間は決まって「私のことなんか全然わかってないくせに!」と声を荒らげるのだ。

わかるわけがない。だって君も他人のことを理解しようとしてないじゃないか。図星をつかれた君は見る見るうちに顔を赤くしていく。最低、とシャツにかけられたコーヒーは幸い生温かった。

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洗脳

 

人間の感情の中で一番制御不能なものは嫉妬だと思うのです。嫉妬。しっと。妬み。羨望。この世で最も醜く汚く、美しく、人間味のあるそれ。どうやら私はそれが人一倍強いようで、あの人が少しでも私以外を見ていたりするとどうしようもなく汚らしい憎悪がたちまち湧き上がり、殺意にまで形を変えてしまいます。それを誤魔化すようにミンティアを口に投げ入れごりごりと噛み砕きます。すうっと喉を透き通るミントの味が鬱陶しく、またそれを誤魔化すように噛み砕く。いわば悪循環の始まりです。あの人は何でもないよだとか友達だからだとか聞いてもない言い訳を続け困ったように微笑み私の頭を撫でました。その大きく骨ばった手が私の心臓を鷲掴みにしてくれたらどれほどいいことか!しかしそんなこと出来るわけもなく(そもそも彼は優しいのでしてくれるわけがありません)、私はまたその甘い笑顔と手に陥落してしまうのです。いっそ嫌いになれたらどれほど楽なのでしょうか。いや、そんなこともない、嫌いになんてなれません。私があなたを嫌うなんて、地球が滅びようと天地がひっくり返ろうと砂漠に雪が降ろうと有り得ないのです。網膜に焼き付いたあなたの困ったその笑顔を食べてしまいたいくらい愛しているのですから!さあ行こうかと私の手を取ったあなたから大好きなそれが消えました。すうっと冷めたような瞳になり、途端に怒りを顕にします。何をそんなに怒っているのでしょうか。ああ、この腕の傷のことですか?これなら心配いりません。これはあなたのことが好きな証拠なのですから。え?やめろと言われてやめれたら苦労しませんよ、やだなあ。これが私の幸せなんです。私の愛の印なんですから邪魔しないでくださいね。幸せの定義なんて知りませんよ。信じることの何が悪いんですか?幸せか不幸かなんて私が決めることでしょう?私だって自由に飼われてみたいのです。どうして泣いているのですか?どうして逃げるのですか?おかしい?怖い?やだなあ、私はあなたのことが好きなだけなんですよ。あなたもきっとそうでしょう?そんな頭ごなしに怒鳴られても分かりません。穢らわしい正義を振りかざさないで、それは正義ではなく偏見と邪険なのです。目を覚ますのはそっちの方。気がつけば目の前は真っ赤に染まりけたましくサイレンの音が鳴り響くではないですか。ああ、ああ、もう。邪魔だなあ。

 

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