0712

セックスが好きだ。愛されてると脳が勝手に勘違いするから。

その瞬間だけは彼は私のことしか見ていなくて、まるで盛りのついた動物のように息を荒くて目を光らせ、喉元に食らいついてくる。浅ましくて可愛くてくしゃりとその黒い塊を撫でてみた。

下半身に伸びた手を見て、この手であの子を抱きしめるのか、なんて嫌なことを考える。思考を振り切るように彼のペニスを自らの中に誘い込み、いやらしく腰を振った。

あ、あ、あ、あ、あ。

断続的に漏れる喘ぎ声に彼の腰の動きも速くなる。すき、すき、すき。うわ言のように出た言葉は宙を引っ掻いて消えた。彼の目に私が映っていないことなんてわかってた。そんなの承知の上なのに。

絶頂を迎えた彼がペニスを引き抜きコンドームを外す。その手際のよさがなんだか悲しかった。好きだよと笑って頭を撫でてくれる人はもういない。ゴミ箱に捨てられた数億の命だけが私たちの結末を知っていた。

 

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